10.自転車教育を実現し継続させる「共助」の仕組み
この教育活動を推進するにあたり、私たちは強固なピラミッド型の組織を作り、体制を強化することを主眼には置いていない。なぜなら、自転車を通じた社会性の教育とは、本来、個人や家族、あるいは地域という小さなコミュニティの中で行われるべきものであり、巨大な組織が中央集権的な求心力を持って管理する性質のものではないからである。
有機的なネットワークがもたらす継続性
子どもたちへの自転車教育を、真に継続性のある活動にするためには、志を持つ個人個人が「点」として存在し、それらが有機的に結びつく緩やかなネットワーク体制が望ましい。
組織を維持することそのものが目的化してしまうと、往々にして資金繰りや管理業務といった運営上の問題にエネルギーを奪われ、本来の目的である「教育」が疎かになる。特定の組織に依存せず、個々の自律した活動が重なり合う形をとることで、資金難などの外部環境に振り回されない、強靭な持続可能性を確保することが可能になるのである。
「楽しさ」が駆動するフレキシブルな参画
活動を広げ、維持していくためのポイントは、できるだけ多くの人がプロジェクトに関わり、一人ひとりに過度な負荷がかからない「分担の知恵」を持つことにある。
そこで最も大切にすべきは、参画するスタッフの「やって楽しい」「関わって嬉しい」という純粋な感情である。義務感ではなく、内発的な動機に基づいた関わりこそが、結果として一部の人間に負担が集中する事態を避け、活動の寿命を延ばすことになる。
「人は人、自分は自分」のペースで関わることができる、自由でフレキシブルな組織イメージ。それは、私たちが理想とする「自律したサイクリストが共生する交通社会」の縮図そのものでもある。
結びに代えて:教室の外へ広がる教育
教育の成果は、スクールの中だけで完結するものではない。 自律した個人が、それぞれの地域で、それぞれのやり方で、子どもたちに自転車の魅力を伝えていく。その多様性こそが、日本の自転車文化を底上げする力となる。
私たちは、大きな組織という「箱」を作るのではなく、自転車を通じて子どもたちの未来を想う「心」の繋がりを広げていきたい。一人ひとりが自分の持ち場でペダルを回し続けること。その小さな回転の集積が、やがて社会全体を動かす大きな力になると確信している。
