指導要領

第3章:スクール開催実務

3-1. スクールを企画する

何のためにスクールを開催するのか
〜カオスをデザインする運営技術

ウィーラースクールの開催は、単なるイベント運営ではない。それは、子どもたちが自ら考え、行動するための「環境(カオス)」を人工的に作り出す、高度なデザイン行為である。
本章では、企画から開催後のフォローまでを9つのフェーズに分け、その具体的なプロセスを解説する

企画の立案

【概要】

いつ、どこで、誰に向けて、どのようなスクールを開催するかという基本骨子の策定プロセス。

【目的】

単なる「交通安全教室」や「自転車体験会」で終わらせないために、開催のコア・バリュー(中心的価値)を定義する。「事故を減らす(恐怖訴求)」ではなく、「自転車で人生を豊かにする(未来志向)」というポジティブなゴールをスタッフ間で共有する。

具体化の流れ

1)ターゲットの明確化

●初心者層: 補助輪外しや、公道デビュー前の幼児・低学年。「乗れるようになる喜び」を重視する。
●経験者層: すでに乗れる高学年。「よりうまく操る楽しさ」や「スポーツとしての魅力」を重視する。

2)ゴールの言語化

終了時に子どもたちがどういう状態であれば「成功」とするかを決める。(例:「全員が汗だくで笑っている」「一本橋を全員がクリアする」など)
いわゆる競技スポーツにおける「試合」と同じ大前提だ。これを抜きにして自転車の教育を行うことは本質を抜いた意味のないものと言えるだろう。

3)形式の決定

●イベント型: お祭りや商業施設での単発開催。体験の「入り口」を作る。
●スクール型: 地域での定期開催。継続的な「成長」を促す。

目的の種類

1)一般的な交通安全やマナー向上の教育

警察や交通安全協会など行政が行う目的とほぼ同等の目的を持つスクール。この中に、自転車の楽しみや可能性をどう感じられるよう組み込むかが大きなポイントとなる。

2)体力の向上やからだづくり

デンマークなどで国レベルで取り組まれているこうした目的をもったスクールは、子どもの日常的な体力を自転車によって向上させようというもの。自転車での運動量は、子どもたちの基礎体力を上げるものとして理論的に実証されている。

4)サイクリングの準備 <重要>

自転車に乗る最大の目的は、サイクリングによって別の場所に移動することにある。
いわゆる競技スポーツにおける「試合」と同じ大前提だ。これを抜きにして自転車の教育を行うことは本質を抜いた意味のないものと言えるだろう。

3)専門的なスポーツトレーニング

自転車競技を始めとして、本格的なスポーツにおける体力づくりに自転車を活用する例は多い。こうした専門性を持ったスクールは、相応の科学的かつ論理的な知識を有し、安全に関することや、スポーツマネジメントを理解した専門のスタッフが行う必要がある。
通常のウィーラースクールの次の段階と言える。

・目的をはっきりさせることにより、スクールの構成やイベントの作り方、構成が変わる

・いかなるパターンであっても、子どもの自主性を疎外しない

・楽しいと感じる環境を用意する

・「サイクリング」を見据える

スクールはゴールではない。最終的な目的は、子どもが自転車というツールを使って移動し、世界を広げる「サイクリング」に出ることである。そのための準備であることを忘れてはならない。

サイクリングを最終目的とする場合、いかに安全に公道を走らせるかを念頭に置いたプログラムが必要
第3章:スクール開催実務