1-4. フロー理論と「挑発」のテクニック
自転車操作技術向上のためのカリキュラムを初めて体験させたとき、開始5分〜10分で必ず見えてくるのが、子どもそれぞれの習熟度の差である。
スクール中、技術的な難題をいち早くクリアする子から、なかなかできない子まで、様々なタイプの子どもが混在する状況が生まれる。別の見方をすれば、同じチャレンジばかり繰り返すことを楽しむ子から、退屈に思えてくる子どもなど、千差万別である。
指導者は、そんな子どもたちの様子をしっかり見て、彼らの状況を把握し理解することが求められる。
例えば、一生懸命取り組んでいる子には、「うまく行った?」「どんな感じ?」など、友だちに語りかけられているような声がけをして、彼ら自身が今なにを練習しているかを意識させる。
また、早々にクリアしてしまった子には、「どう?簡単?」などと尋ねて様子をうかがう。「もうできた!」「かんたん!」などと答える子どもは、技術的に進んでいるので、そんな子に対しては、「じゃあ、もっと難しいコースをつくってみるから、やってみるか?」などと、次の段階へむけて挑発してみる。
新たな課題を突きつけられた子どもは、十中八九「やってみたい!」と反応するので、基本のコースに一工夫加えて少し難易度をあげた仕掛けを用意すると、子どもたちは食いつくようにその新たなコースに群がる。子どもたちの練習継続の集中力を持続させる必要があるときには、よく取る手法である。
しばらくすると、その様子を見た多くの子どもたちが新しいコースに挑戦するため、そこに集まってくるという効果が出ることが多い。
基本コースの役割(安心領域)
基本のカリキュラムとして、自転車に乗るために、以下の必要な動作をいくつか的を絞って体験させる。
1)ペダルをしっかり漕ぐ
2)まっすぐ走る
3)しっかり止まる
4)バランスよく走る
これらを習得するために用意されたコースは、まっすぐ走るシート、一本橋、スラローム、シーソーなどで構成される。
乗車技術が未熟な子だと、この基本コースは、そこそこ高い壁となるが、しっかりとコツを教えてサポートしてあげれば、何度かトライを繰り返すうちに少しずつ出来るようになっていく。
本来、子どもの年齢や乗車技術には個人差があるが、概ね30分から1時間程度繰り返せば、多少フラフラする子でもある程度は、クリアできるようになるコース設定である。ここで子どもたちに「できた!」という安心感を与える。
「退屈」との戦い
基本ができるようになると、子どもは退屈し始める。ここが介入のタイミング。
挑発というスイッチ
勝手に難しくするのではなく、彼らを挑発する。これにより、課題の難易度(Challenge)と本人のスキルが再び釣り合い、子どもは没入状態(Flow)に戻る。
理論的裏付け:フロー理論(Flow Theory / Csikszentmihalyi)
人は「能力」と「課題」のバランスが取れた時に最高のパフォーマンスを発揮する。指導者はそのバランサーである。
blackynakajima 2026.2.12 update
