指導要領

第1章:指導の基本理論

1-5. アフォーダンスによる「無言の指導」

ウィーラースクールでは、子どもたちが走行中、様々な状況への対応能力を向上するため、決められたカリキュラムを応用し、子どもに合わせたコース改変などの工夫をすることが必要と考える。

日本でウィーラースクールが始まってまだ間もないころ、子どもたちは、まっすぐ走る、ゆっくり走る、バランスよくスラロームするなどの基本動作を学ぶコースでの練習を行うことがほとんどであった。だが、子どもの様子や習熟度に大きな開きがあることから、学ぶ項目をさらに細分化する必要が生まれてきたため、操作技術のより一層の向上を目指し、基本のコースに様々な種目を足していく応用を行う必要を現場が感じるようになってきた。
例えば、コーンを何個も積み上げ、体や自転車の一部が少しでも触れると、そのゲートはいとも簡単に壊れてしまう狭い隙間を通るコースを作ったり、姿勢を極端に低くしないと、くぐれないような高さに、ポールを突き出し、リンボーダンスのように下をくぐらせる。
また、サッカーのマーカーなどを使い、極端に狭いジグザグの通路を用意する。走ってきた子どもはブレーキをかけて、決められた線までに止まるのだが、少しでもその線をオーバーすると、固定せずにただ置かれているポールに前輪があたり落ちてしまうなど、その場の子どもたちの技術レベルや雰囲気をよく観察し、その子達が興味を持ちそうな応用編をライブ感覚で展開していく。
当然、子どもにも問いかけ、時には相談、時には挑発しながら、彼らのモチベーションを維持することも大切だ。

ここで大切なのは、その応用型は単なる変化ではなく、その時の彼らに必要な技術の習得に必要な要素が組み込まれていなければいけないということだ。
例えば、ブレーキをどのタイミングで、どれくらいの強さでかければいいのか。スピードを落として、まっすぐ走る体制を維持するには、どのようにすればいいかなど、必要な技術は、大人が言葉で伝える前に、子どもたちに直感的な理解を促すようにしておくことが望ましい。

優れたデザインは、優れたパフォーマンスを生み出す。
それがコースをデザイン(設計)する意味である。

 

言葉で止めず、カーブで止める

「ブレーキをかけろ」と大きな声で指導する代わりに、障害物タイムトライアルなどのゲームなどを通じて、ブレーキでスピードを調節しないと曲がれないきついカーブを用意したり、ブレーキをしっかりかけないと止まれないような場所を用意する。子どもは「言われたから」ではなく、「曲がりたいから」自らブレーキをかけることを覚える。

環境が行動を決定する

コースを設計する際には、減速や停止が必要な箇所を多数配置する。これら全てが、子どもの身体に直接語りかける「指導」となる。

理論的裏付け:アフォーダンス(Affordance / J.J. Gibson)
環境が生物に特定の行動を促す性質のこと。優れたコースデザインは、適切な動作を自然に引き出す(アフォードする

blackynakajima     2026.2.12 update

第1章:指導の基本理論