第1章:指導の基本理論
1-11. 注意の「伏線回収」(リスクを理解に)
明確ではない「気をつけて!」は死語に
スクール中、会場に響き渡る「気をつけて!」「危ない!」。これは指導者が「わたしは注意しましたよ」というアリバイ作りのために発しているに過ぎない。
「気をつけて」と言われて、「よし、注意力を高めよう」と具体的に行動できる子どもはいない。
必要なのは、例えば「前に砂利がある」といった「具体的な事実への問いかけ」である。
1. 危険は「怒らず、明確に」伝える
もちろん、事故につながる危険については、事前に明確な言葉で伝える。
ただし、怒鳴ったり威圧したりはしない。淡々と、しかし真剣に、なぜ危ないのかを子どもが理解できる言葉で「予告」する。
2. 体験と言葉をリンクさせる(伏線回収)
しかし、事前の注意はあくまで「知識」にしかすぎない。
子どもが実際に走り出し、ヒヤッとした瞬間や、タイヤが滑った瞬間こそが、本当の学びのチャンスだ。その瞬間にすかさず声をかけ、その理由と理屈などを説明する(フォローアップ)。
これにより、事前の「注意(言葉)」と、現場の「体験(感覚)」がつながり、子どもの中で「なるほど、こういうことか!」という深い納得が生まれることになる。
この「伏線回収」が決まった時、子どもの安全意識は、誰かに言われたルールから、自分自身で守るべき知恵へと昇華される。
理論的裏付け:有意味受容学習(Meaningful Reception Learning / Ausubel)
新しい知識(事前の注意)を、学習者が既に持っている知識や経験(実際の走行感覚)と関連付けることで、初めて「意味のある学習」として定着するという理論。事前の注意は「先行オーガナイザー」として機能する。

第1章:指導の基本理論