指導要領

はじめに

2.自転車について日本の社会的状況

自転車についての教育を進めるにあたり、まずは現在、自転車がおかれている社会状況を整理し理解しよう。

そもそも、なぜ普段の生活の質を向上するための、スポーツや余暇での自転車利用などの、市民レベルの自転車活用の理解が進まないのか。自転車を有効な交通手段として位置づけた行政レベルでの
整備などが追いつかないのか。それは、自転車=便利で快適 という認識が社会全体に広がっていないからではなかろうか。
言わずもがな自転車は便利で快適な乗りものである。それだけでなく、健康増進や自分の可能性発見、人との繋がりなど、日々の生活を向上させてくれる乗りものだ。
これに関しては、実際に自転車を愛好しているサイクリストからの異論はないだろう。

日本において自転車を日常の活動や社会に有効なツールとして愛用している人口は、北欧などの自転車先進国からすると少ない。サイクリングを楽しむ人が極端に少ないこの国では、自転車利用率や、台数で言えば、世界屈指であるのにもかかわらず、有益な活用という点では北欧からかなり遅れていると言わざるを得ない。

さて交通事故に関しては、直近の統計である2018年の自転車が絡む事故が85,641件で、2008年の162,663件からは半減している。ただ、交通事故による死者数全体に占める自転車乗車中の死者数は、15.3%の636人(30日以内死者数)を数え、この他に重傷者が7789人にのぼる(2018年)。

警察庁 (2019)「平成30年中の交通事故の発生状況
警察庁 (2019)「平成30年中の30日以内交通事故死者数の状況

2006年ごろから、サイクルスポーツブームが訪れ、スポーツバイクを楽しむ層が増えたことで、交通ルールへの意識は以前より高くなっていると感じる。これは各種イベント、キャンペーン等を通じて業界全体が、交通ルール遵守、マナー意識向上のための啓発に取り組んできたことに加え、サイクリスト自身がルール遵守で自分たちのサイクリング環境を維持することが得策であると認識しはじめたことも大きい。

はじめに